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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参

「それなら、何故、お前は私から離れていこうとする?」
お彩は市兵衛を見た。形良き眼には今、冷ややかさのかけらもない。ただ、切実さのこもったまなざしが直截にお彩に向けられている。
お彩は、市兵衛の物問いたげな視線からそっと顔を背けた。呟くような声で言う。
「あなたと私は、あまりにも違いすぎるもの」
市兵衛は静かな声で言った。
「以前、住む世界が違うと言ったな、だから、所帯は持てねえと。そういう意味なのか」
お彩は、うつむいたまま頷いた。
「それもむろんあります。でも、違うんです。最初、私はあなたの淋しそうな眼を見て、私たちは同じ者同士―、孤独を抱え持った人間なのだと思いました。けれど、それは私の勘違いでした。
お彩は市兵衛を見た。形良き眼には今、冷ややかさのかけらもない。ただ、切実さのこもったまなざしが直截にお彩に向けられている。
お彩は、市兵衛の物問いたげな視線からそっと顔を背けた。呟くような声で言う。
「あなたと私は、あまりにも違いすぎるもの」
市兵衛は静かな声で言った。
「以前、住む世界が違うと言ったな、だから、所帯は持てねえと。そういう意味なのか」
お彩は、うつむいたまま頷いた。
「それもむろんあります。でも、違うんです。最初、私はあなたの淋しそうな眼を見て、私たちは同じ者同士―、孤独を抱え持った人間なのだと思いました。けれど、それは私の勘違いでした。

