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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参

控えの間を横切り、極彩色で花鳥が描かれた襖を開けると、広く取った寝室が見渡せる。なまめいた紅絹の夜具が整然とのべられているのが何故か、お彩を圧倒した。
お彩はふとその夜具の上に茶色いものが落ちているのを見つけ、近寄ってみた。
そして、その正体を見て、思わず苦笑いが込み上げてくるのをこらえることができなかった。今宵、お彩が初めての客と入るはずの床の上に落ちていたのは、干からびたヤモリであった。
この何とも奇妙な薄気味の悪い代物をここに置き去りにしていった犯人はそも誰か―。
お彩には心当たりがある。お職を張る太夫(花魁)はこの見世の筆頭格であり、いちばんの売れっ妓だ。いくら新参で部屋持ちという破格の扱いを受けているとはいえ、所詮、お彩とは格が違う。
お彩はふとその夜具の上に茶色いものが落ちているのを見つけ、近寄ってみた。
そして、その正体を見て、思わず苦笑いが込み上げてくるのをこらえることができなかった。今宵、お彩が初めての客と入るはずの床の上に落ちていたのは、干からびたヤモリであった。
この何とも奇妙な薄気味の悪い代物をここに置き去りにしていった犯人はそも誰か―。
お彩には心当たりがある。お職を張る太夫(花魁)はこの見世の筆頭格であり、いちばんの売れっ妓だ。いくら新参で部屋持ちという破格の扱いを受けているとはいえ、所詮、お彩とは格が違う。

