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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参

「はい」
お彩は消え入るような声で頷いた。うつむいて眼を伏せるお彩を見て、おしがは独りごちた。
「まァ、確かに女郎を見る眼があるといわれるうちの旦那が見込んだだけはある。いかにも素人のような、虫も殺さないような大人しげなこの風情を好む客は多いだろうからねえ。今夜からせいぜい気張って稼いでおくれよ、山吹さん。この苦界で浮くも沈むも、あんた次第なんだからさ。しっかりやって、良い馴染みを持てば、それだけ、あんたのここ(廓)での立場ってものもよくなる。吉原では男に惚れさせても女郎が惚れるもんじゃない。そして、男に惚れさせるその腕は、あんた次第さ。あんたは本当にツキに恵まれてるようだよ。うちの旦那に見込まれて、おまけに今夜の客は、たいしたものだよ。何せ―」
お彩は消え入るような声で頷いた。うつむいて眼を伏せるお彩を見て、おしがは独りごちた。
「まァ、確かに女郎を見る眼があるといわれるうちの旦那が見込んだだけはある。いかにも素人のような、虫も殺さないような大人しげなこの風情を好む客は多いだろうからねえ。今夜からせいぜい気張って稼いでおくれよ、山吹さん。この苦界で浮くも沈むも、あんた次第なんだからさ。しっかりやって、良い馴染みを持てば、それだけ、あんたのここ(廓)での立場ってものもよくなる。吉原では男に惚れさせても女郎が惚れるもんじゃない。そして、男に惚れさせるその腕は、あんた次第さ。あんたは本当にツキに恵まれてるようだよ。うちの旦那に見込まれて、おまけに今夜の客は、たいしたものだよ。何せ―」

