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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第41章 第十五話 【静かなる月】 其の参

【参】
それからのことを、実は、お彩はあまりよく記憶していない。すべては、まるで現実感のない世界で起こっているようで、その非現実的な世界にいる自分を醒めた眼で見つめるもう一人の自分がいるようにも思えた。
その極めて現実感のない自分を取り巻く世界が急速に現実味を伴って見え始めたのは、吉原の遊廓に脚を踏み入れてからのことであった。
三日前、肥前屋を後にしたお彩は、そのまま女衒の兼平太(かねへいた)の許を訪ねた。兼平太の住まいを教えたのは、他ならぬ肥前屋惣右衛門である。お彩をひとめ見た兼平太はその脚でお彩を連れ、吉原の遊廓「三國屋」を訪ね、楼主の浅助(せんすけ)と話をつけた。
それからのことを、実は、お彩はあまりよく記憶していない。すべては、まるで現実感のない世界で起こっているようで、その非現実的な世界にいる自分を醒めた眼で見つめるもう一人の自分がいるようにも思えた。
その極めて現実感のない自分を取り巻く世界が急速に現実味を伴って見え始めたのは、吉原の遊廓に脚を踏み入れてからのことであった。
三日前、肥前屋を後にしたお彩は、そのまま女衒の兼平太(かねへいた)の許を訪ねた。兼平太の住まいを教えたのは、他ならぬ肥前屋惣右衛門である。お彩をひとめ見た兼平太はその脚でお彩を連れ、吉原の遊廓「三國屋」を訪ね、楼主の浅助(せんすけ)と話をつけた。

