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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐

「もう、どうにもならねえんだ。一昨日だったか、富久の字が金を借りた金貸しの手下がうちに来たんだ。お前は丁度、八百屋に行ってる最中だったかな。そのときに聞いた話じゃア、証文には卯月の末までに富久の字が借りた三十両、耳を揃えてきっちり返すってえことが書かれてるらしい。だが、今の俺に三十両もの大金は払えやしねえ。つまり、その代わりに抵当に入れてあるこの店を手放すしか道はねえってことだ。―済まねえな。お彩ちゃんがお美杷坊を京屋に渡してまで、守ってくれようとしたこの店をこんなことでみすみす手放さなきゃならなくなっちまってさ」
喜六郎はポツリと言うと、うなだれた。
「本当にもうどうしようもないんですか?」
お彩が重ねて訊くと、喜六郎は無言で頷いた。
喜六郎はポツリと言うと、うなだれた。
「本当にもうどうしようもないんですか?」
お彩が重ねて訊くと、喜六郎は無言で頷いた。

