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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第40章 第十五話 【静かなる月】 其の弐

喜六郎の顔色は相変わらず蒼白い。あまり込み入った話ができる状態ではないのかもしれないけれど、もし、おとみの推量が当たっていたとしたら―、一刻も早く何らかの手を打った方が良い。喜六郎が全力でお彩を守ろうとしてくれているように、お彩もまた、喜六郎と「花がすみ」を守るためには、どんな努力も惜しまないつもりでいる。
重たい静けさを破ったのは、喜六郎の方であった。
「誰に訊いた?」
少し逡巡した後、お彩はひと息に言った。
「筆屋のおとみさんです」
また、少し沈黙があった。
「全っく、あのお喋り婆さんめが」
口ぶりとは裏腹に少しも怒ってはいない表情で呟く。
重たい静けさを破ったのは、喜六郎の方であった。
「誰に訊いた?」
少し逡巡した後、お彩はひと息に言った。
「筆屋のおとみさんです」
また、少し沈黙があった。
「全っく、あのお喋り婆さんめが」
口ぶりとは裏腹に少しも怒ってはいない表情で呟く。

