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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参

私も京に帰ったら、いつか、“花がすみ”のような店を持ちたいですね」
ふいに陽が翳った。
先刻まであれほど輝いていた太陽が鈍色の雲に隠れている。池の面が暗く淀んで見えた。
太陽が隠れると、途端に寒さが身に迫ってくるようだ。池を渡って吹きつけてくる風は冷たい。もう霜月も終わりが近いのだと、お彩はぼんやりと考えた。
「それで、これからどうするつもりなんですか? 確かに、京屋の旦那さんのなさりようは情け容赦もねえが、裏を返せば、強引な出方をするのは、それだけ旦那がお彩さんとお美杷ちゃんに心底帰って貰いたいとお思いだってことでしょう。そこまで惚れに惚れぬかれたとありゃア、女冥利にも尽きるんじゃねえですかい? いっそ、思い切って、旦那の腕の中に飛び込んじゃあ、どうですか」
ふいに陽が翳った。
先刻まであれほど輝いていた太陽が鈍色の雲に隠れている。池の面が暗く淀んで見えた。
太陽が隠れると、途端に寒さが身に迫ってくるようだ。池を渡って吹きつけてくる風は冷たい。もう霜月も終わりが近いのだと、お彩はぼんやりと考えた。
「それで、これからどうするつもりなんですか? 確かに、京屋の旦那さんのなさりようは情け容赦もねえが、裏を返せば、強引な出方をするのは、それだけ旦那がお彩さんとお美杷ちゃんに心底帰って貰いたいとお思いだってことでしょう。そこまで惚れに惚れぬかれたとありゃア、女冥利にも尽きるんじゃねえですかい? いっそ、思い切って、旦那の腕の中に飛び込んじゃあ、どうですか」

