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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第37章 第十四話 【雪待ち月の祈り】 其の参

【其の参】
お彩が二階の喜六郎の居間に呼ばれたのは、その夜のことである。丁度、夜四ツ(午後十時)を少し回り、店の軒燈の明かりを落としたばかりのときであった。
安五郎は既に一刻ほど前に帰っていた。最後まで居残って手伝うと言ったのだが、喜六郎はお彩にも例の話をつけておくからと、無理に先に帰したのである。今日一日、喜六郎が二階の自室で安静にしていられたのも、安五郎が板場を仕切ってくれたからであった。
暖簾を仕舞ったからといって、飯屋の一日がそれで終わるわけではない。最後の客が帰った後、器を洗ったり、店内をきれいに掃き清めたりと仕事は山ほどもある。実際に帰途につくのは更に半刻以上も後のことになる。
お彩が二階の喜六郎の居間に呼ばれたのは、その夜のことである。丁度、夜四ツ(午後十時)を少し回り、店の軒燈の明かりを落としたばかりのときであった。
安五郎は既に一刻ほど前に帰っていた。最後まで居残って手伝うと言ったのだが、喜六郎はお彩にも例の話をつけておくからと、無理に先に帰したのである。今日一日、喜六郎が二階の自室で安静にしていられたのも、安五郎が板場を仕切ってくれたからであった。
暖簾を仕舞ったからといって、飯屋の一日がそれで終わるわけではない。最後の客が帰った後、器を洗ったり、店内をきれいに掃き清めたりと仕事は山ほどもある。実際に帰途につくのは更に半刻以上も後のことになる。

