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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第35章 第十四話 【雪待ち月の祈り】

「花がすみ」の主人喜六郎は将棋の駒を思わせる四角張った貌、ふぐ提灯を地でいくようなギョロリとした眼でお世辞にも男前とは言い難い。小柄で強面の五十過ぎの男だが、笑うと、人の好さが滲み出て、まるで人が変わったように見える。この喜六郎、見かけによらず几帳面で、店内はおろか店の前の道も塵ひとつないように磨き上げておかなければならない。もちろん、それもお彩の仕事である。
「花がすみ」は狭い道に面しており、昼間とて殆ど人通りがない。この道は随明寺の門前道からずっと続いていて、細い道の突き当たりに店が位置している。
「花がすみ」は狭い道に面しており、昼間とて殆ど人通りがない。この道は随明寺の門前道からずっと続いていて、細い道の突き当たりに店が位置している。

