この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第34章 第十三話 【花待ち月の再会】 其の参

仁左衛門の下卑た笑いに、市兵衛は呆れたような声で応えた。
「全っく、ペラペラとよく喋る男だぜ。それが江戸の呉服商を束ねる組合の頭(かしら)だってえいうんだから、組合も地に落ちたもんだな」
「何だとォ? 所詮は色香で家付き娘をたぶらかした成り上がり者の若僧めが。そんな生意気な口をきいて良いのか? お前の大切なガキがどうなっても良いというんだな」
そのひと言にお彩の中で我慢の糸がプツンと切れた。精神(こころ)の限界もここまでであった。
「お美杷はどこにいるんですか? お願い、あの子に逢わせて。お美杷にひとめで良いから逢わせて」
夢中で言い募るお彩に仁左衛門は笑顔を向けた。
「全っく、ペラペラとよく喋る男だぜ。それが江戸の呉服商を束ねる組合の頭(かしら)だってえいうんだから、組合も地に落ちたもんだな」
「何だとォ? 所詮は色香で家付き娘をたぶらかした成り上がり者の若僧めが。そんな生意気な口をきいて良いのか? お前の大切なガキがどうなっても良いというんだな」
そのひと言にお彩の中で我慢の糸がプツンと切れた。精神(こころ)の限界もここまでであった。
「お美杷はどこにいるんですか? お願い、あの子に逢わせて。お美杷にひとめで良いから逢わせて」
夢中で言い募るお彩に仁左衛門は笑顔を向けた。

