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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第33章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の弐

それでも、お彩は身じろぎもしない。
市兵衛の手を払いのけたい、のけなければと思うのに、もう少しだけこの温もりに触れていたいと願うもう一人の自分がいる。
男の手が肩から離れ、安堵したの束の間、市兵衛はそのお彩の心の叫びを見透かすかのように、背後からそっと抱きしめてきた。
「私の気持ちは今でも変わらない」
耳元で囁かれたその刹那、お彩は理性を取り戻した。
市兵衛の手から渾身の力で逃れると、真正面から向き合った。憎しみ、恋情、哀しみ、やるせなさー、あらゆる感情が嵐のように胸の中でせめぎ合う。
この男(ひと)は、いつもそうだ。春の嵐のように私の心を翻弄する。
市兵衛の手を払いのけたい、のけなければと思うのに、もう少しだけこの温もりに触れていたいと願うもう一人の自分がいる。
男の手が肩から離れ、安堵したの束の間、市兵衛はそのお彩の心の叫びを見透かすかのように、背後からそっと抱きしめてきた。
「私の気持ちは今でも変わらない」
耳元で囁かれたその刹那、お彩は理性を取り戻した。
市兵衛の手から渾身の力で逃れると、真正面から向き合った。憎しみ、恋情、哀しみ、やるせなさー、あらゆる感情が嵐のように胸の中でせめぎ合う。
この男(ひと)は、いつもそうだ。春の嵐のように私の心を翻弄する。

