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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第32章 第十三話 【花残り月の再会~霞桜~】 其の壱

逆にそのことが大きな不幸を招くことになるとは、お彩も伊勢次も考えだにしなかった。二人は市兵衛の手から逃れるためにもしばらく江戸を離れることにし、江戸からそう遠くない近在の小さな農村に移り住んだ。そして、お彩は伊勢次と今度こそ結ばれたが、お彩は逆にそれがきっかけで、我が身がいまだに市兵衛を忘れられぬことを思い知った。伊勢次は、いかにしても惚れた女の心に手が届かぬことに気づき、絶望のあまり入水して果てた。
伊勢次の死後は衝撃を受け、自分も後を追おうと思ったお彩だったが、伊勢次が何より大切にしていた母おきわの世話をするために、再び江戸に戻る決意を固めた。お彩は去年の十月に無事身二つになり、たったふた月ほど前に、生まれた赤ん坊を連れて江戸に帰ってきたばかりだ。
伊勢次の死後は衝撃を受け、自分も後を追おうと思ったお彩だったが、伊勢次が何より大切にしていた母おきわの世話をするために、再び江戸に戻る決意を固めた。お彩は去年の十月に無事身二つになり、たったふた月ほど前に、生まれた赤ん坊を連れて江戸に帰ってきたばかりだ。

