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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

「まだ何もしていないのに。親孝行なんて、何もしていないのに」
それなのに、死んでしまった。
伊勢次のときと同じだ。
―幸せだったよ。
ただそのひと言を残し、おきわまでもが逝ってしまった。
皆、皆、お彩を残して去って逝く。まるで砂が手のひらの隙間から空しく零れ落ちるように、大切な人たちがお彩の傍から次々といなくなっていってしまう。
おきわの顔に苦悶の表情がないことだけが今はせめてもの救いであった。恐らく、苦しみもない安らかな最期の瞬間を迎えたのだろう。
それなのに、死んでしまった。
伊勢次のときと同じだ。
―幸せだったよ。
ただそのひと言を残し、おきわまでもが逝ってしまった。
皆、皆、お彩を残して去って逝く。まるで砂が手のひらの隙間から空しく零れ落ちるように、大切な人たちがお彩の傍から次々といなくなっていってしまう。
おきわの顔に苦悶の表情がないことだけが今はせめてもの救いであった。恐らく、苦しみもない安らかな最期の瞬間を迎えたのだろう。

