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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

おきわの傍の小さな布団には、お美杷が寝入っている。静まり返った四畳半に、嬰児(みどりご)の安らかな寝息だけが聞こえていた。おきわの慈しみに溢れたまなざしがお美杷のあどけない寝顔に向けられた。
「伊勢次がこんな可愛い子を残してくれて、良かったよ。お美杷ちゃんを生んでくれて、ありがとうよ。そう言えば、丁度、今月はお美杷ちゃんの初節句になるのだったね。あんな古ぼけたものだけど、無いよりは少しはマシかもしれない。私がいつか元気になって、お美杷ちゃんに新しいお雛様を買ってあげられれば良いんだけど」
あの雛人形のことを言っているのだと、すぐに判った。
「伊勢次がこんな可愛い子を残してくれて、良かったよ。お美杷ちゃんを生んでくれて、ありがとうよ。そう言えば、丁度、今月はお美杷ちゃんの初節句になるのだったね。あんな古ぼけたものだけど、無いよりは少しはマシかもしれない。私がいつか元気になって、お美杷ちゃんに新しいお雛様を買ってあげられれば良いんだけど」
あの雛人形のことを言っているのだと、すぐに判った。

