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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

おきわは弱々しい声で続けた。
「おさきさんが偶然、見たそうだよ。あんたが真夜中に井戸辺で水を被ってるところをね。何でも夜中に厠に行きたくなっちまって、傍を通りかかったときに見たらしいよ。声をかけるのも悪いかなと思って、黙ってたらしいけど。あんたには内緒だよって、そっと教えてくれたのさ。あの人の良いところはめいっぱいあるけど、ちょっと口の軽いのは頂けないねえ」
おきわの口ぶりは、やや冗談めかしてさえいる。声も顔もこれまでお彩が耳にしたこともないような親しげなものだった。
「でも、おさきさんが言ってたよ。やっぱり、伊勢さんの目がねにかなった女だけはある。見上げたものだってね。伊勢さんは可哀想にあんな死に方をしちまったけど、良い嫁さんを貰って、良い子を残していったねって」
「おさきさんが偶然、見たそうだよ。あんたが真夜中に井戸辺で水を被ってるところをね。何でも夜中に厠に行きたくなっちまって、傍を通りかかったときに見たらしいよ。声をかけるのも悪いかなと思って、黙ってたらしいけど。あんたには内緒だよって、そっと教えてくれたのさ。あの人の良いところはめいっぱいあるけど、ちょっと口の軽いのは頂けないねえ」
おきわの口ぶりは、やや冗談めかしてさえいる。声も顔もこれまでお彩が耳にしたこともないような親しげなものだった。
「でも、おさきさんが言ってたよ。やっぱり、伊勢さんの目がねにかなった女だけはある。見上げたものだってね。伊勢さんは可哀想にあんな死に方をしちまったけど、良い嫁さんを貰って、良い子を残していったねって」

