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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐
「ここまで来ては、正直に申して、施すすべはない。後は仏の加護を祈るばかりじゃ。冷えるのは病人には良くないゆえ、できるだけ温かくして、眼が醒めれば、これを飲ませてやりなさい」
 竹庵は明日もう一度来ると言って、お彩にひと包みの薬を渡して帰っていった。
 お彩は家にあるだけの布団を集め、おきわに着せてやった。火鉢の火が消えていないのを確かめてから、お美杷を寝かしつけ、一人外に出た。
 共同井戸まで行き、釣瓶を井戸に落とし、冷たい水を汲み上げる。この寒い夜に、お彩は長襦袢一枚きりであった。その薄着の身に、たった今汲み上げたばかりの井戸水をザァーとかける。
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