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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

「気分が悪いですか」
お彩が気遣わしげに訊ねると、おきわは眼を瞑ったまま、かすかに首を横に振った。
「どこか苦しいところはありませんか」
これにも首を振る。お彩はとにかくホッとして、続けた。
「竹庵先生を呼んできましょうか」
伊東竹庵(いとうちくあん)は齢六十ほどの町医者である。父の代からの町医者ということで、人柄も腕の方もなかなかという評判であったが、高い施薬料は取らないということもあってか、庶民には人気がある。お彩が掛かり付け医の名を挙げると、おきわは、これにもまた首を振った。
相も変わらず眼を閉じたままで、お彩の方を見ようともしない。取りつく島もないその態度に、お彩は小さな溜息を零した。
お彩が気遣わしげに訊ねると、おきわは眼を瞑ったまま、かすかに首を横に振った。
「どこか苦しいところはありませんか」
これにも首を振る。お彩はとにかくホッとして、続けた。
「竹庵先生を呼んできましょうか」
伊東竹庵(いとうちくあん)は齢六十ほどの町医者である。父の代からの町医者ということで、人柄も腕の方もなかなかという評判であったが、高い施薬料は取らないということもあってか、庶民には人気がある。お彩が掛かり付け医の名を挙げると、おきわは、これにもまた首を振った。
相も変わらず眼を閉じたままで、お彩の方を見ようともしない。取りつく島もないその態度に、お彩は小さな溜息を零した。

