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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第31章 第十二話 【花見月の別れ】 其の弐

江戸は弥生を迎え、朝夕はまだ冬の寒さを残してはいたものの、日中は春を思わせる温かな陽差しが降り注ぐようになった。江戸市中の至るところでは梅が可憐な花を咲かせ、梅見客で賑わう季節となった。
ある日の朝、おきわが血を吐いた。それも少々の量ではなく、かなりの量で、薄い寝衣の襟元から掛け布、枕までが血で汚れた。丁度、お彩はその時、傍にいて、例の瀬戸物屋の娘の婚礼衣裳を縫っていた。お彩は大量の血を見るなり、狼狽して叫び声を上げた。
「おきわさん、大丈夫ですか」
お彩がこの長屋で暮らすようになってひと月になるが、おきわが血を吐いたのは、お彩が最初に来たときだけだった。
ある日の朝、おきわが血を吐いた。それも少々の量ではなく、かなりの量で、薄い寝衣の襟元から掛け布、枕までが血で汚れた。丁度、お彩はその時、傍にいて、例の瀬戸物屋の娘の婚礼衣裳を縫っていた。お彩は大量の血を見るなり、狼狽して叫び声を上げた。
「おきわさん、大丈夫ですか」
お彩がこの長屋で暮らすようになってひと月になるが、おきわが血を吐いたのは、お彩が最初に来たときだけだった。

