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第23章 煉獄（れんごく）への扉

　五郎の言葉に、エッと思いながら、玲奈は男の胸の以外な暖かさに身を任せていた。


（あほっ、なになついてんの。けど、気持ち良かった。いけん、こんなんに騙されてたら、また痛い目に会うわよ。もう、痛い目にはあってるけど。もう、逃げ出されへんのかな？）


　様々に思いが沸き上がり、玲奈には今この状況に身を任せるしか選択肢がないように思われた。
　男の体温と自らの体温が混じり合い、彼女は再び眠気に襲われたが、


「眠くなったんやな、玲奈？ふふふ、寝てもかまへんよ。家に着いたら、起こしてやるわ。夕ご飯も食べたいしな。お前の手料理が楽しみやしな。ふふふっ。」


　手料理と言う言葉を聞いて、玲奈はギョッとしたが、


「手料理って、私がまともに作ると思うの？でも、アンタが気に入るかどうかは、知らないわよ。毒入れるかも知れへんしね。」


　眠気が吹き飛んだかのように、皮肉を込めて彼女が言うと、面白い事を聞いたと言うように、


「毒入りか、おもろいな。けど、お前が作ってくれるんなら、毒入りでもエエなぁ、美味しいやろうし。美味しいもん食べられて、その結果死ねるんなら、本望やな。ふふふ。」


「うそぅ、ほんなら、毒入り作ってあげるわ。楽しみにしとき！」


　悔し紛れに毒づきながら、玲奈は何を作ろうか献立を考え始めている自分に驚きながら、その事を楽しみし始めていた。


「ありがたいな、手料理なんて何年ぶりかな？ふふふ、ホンマ殺されてもエエわ。そろそろ着くぞ。このまま車まで、行くかな？エエんやろ、お前は？」


「えっ、うん。このままの方がエエわ。楽チンやし。」


　玲奈は、この男に軽口（かるぐち）を叩ける自分自身を不思議に感じていたが、それも今だけだと言う事実を忘れてはいなかった。
　五郎も玲奈との軽口を楽しんでいる自分に驚き、ナゼか少し戸惑っていた。
　玲奈に今までの奴隷達には感じなかった愛情を抱き始めていることを、五郎は気づき驚き戸惑っていた。
　車の前に立ち、ドアを開けると助手席に玲奈を座らせ、運転席に乗り込みすぐにエンジンをかけ、スタートさせた。


（参ったな、コイツを好きになってるな。ヤバイか？まあ、コイツの復讐をしてやるってことが、前の俺ならないことやな。参った。）


　五郎の心の動きを知らぬ気に車の振動と暖房の気持ち良さで、玲奈は再び眠りに落ちていた。