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夜は、毎晩やってくる。
第1章 プレイ・フォー・ペイ
「三万……か」
鈴木山くんが少し息を呑む。
「俺も童貞だから相殺とかってのはナシだからね」
詩利香が先回りして言う。
「わかってるよ。そーだよな、さすがに処女と童貞は釣り合わねーよな……」
「てか、アンタ、そもそもおカネあんの?」
「おう、たまたま、今日帰りにアンプを買おうと思って、降ろした貯金を持ってきてたんだ」
「ふーん……で、どーするの?」
「三万……」
鈴木山くんが眉を寄せて床を睨む。
そっか、バンドやってるもんね。きっと、アンプだって練習したりするのに必要なものなんじゃないのかしら。
鈴木山くんの大事なもの。
それを……あたしなんかの処女と換えていいの?
「よしっ……払うぜ、三万!」
意を決して顔を上げると、鈴木山くんはあたしを見た。
財布から一万円札を三枚、取り出して詩利香に渡す。
「美緒の処女……俺に捧げて貰うから」
違うもん……あたしの処女は零音のもの。
鈴木山くんは……ごめん、ごめんね。
そんな想いを胸に隠してあたしもコクリと頷く。
「おいっ、アンタら二人は外に出なよ! 見たいならひとり一万だからね!」
詩利香に言われて、鈴木山くんの友達二人が「そんな殺生な」という表情になる。
そして即座に、一方の子が答える。
「払う……払うよっ、一万!」

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