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禁断の果実に口づけを
第28章 毒リンゴ
「秋山代理、お疲れ様です」
先に声を掛けたのは、川端伊織だった。
「あっ、川端さんお疲れ様」
『あなたもバツの悪そうな顔をするのね…』
洋子は少し伊織と離れた席に座り、コーヒーを自分のカップに入れた。
伊織は資料をまとめる作業をしていて、洋子と目を合わそうとしなかった。
重い沈黙が二人の間に流れる。
それでも、黙々と菓子パンを食べるわけにはいかず、伊織に話し掛ける言葉を探した。
丁度、コーヒーを飲みながら出掛ける前の資料を揃えていた様に見えた。
倉橋朋子から伊織の今後の事を頼まれていた事もあり、少し緊張しながらも声を掛けてみた。
「川端さん…
何か困っている事ありませんか?」
「大丈夫です」
即答で応えて、洋子となるべく視線を合わせようとしない伊織。
「そう。分からない事があったら聞いてね」
「はい。仕事は分からない事ばっかりですが、秋山代理は分かりやすいですよね」
伊織は下を向きながらも、口元を歪ませてニヤリと笑った。
「どういう事?」
「秋山代理は目に見える事だけで判断をする。
目に見えて嫌なものは、感情が赴くままに動く。
でも、いくらかの罪悪感も感じてきたみたいで感情をコントロールする様にもなった。
本当に分かりやすいですね。
随分、苛めっ子特有の幼稚さで周りを振り回してきましたものね!」
伊織は作業を辞めて、洋子と視線を合わせ、一気に溜めていたものを爆発させるかの様にそう言い切った。

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