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禁断の果実に口づけを
第13章 真冬の打ち上げ花火
時間がない健は、事が済むとシャワーを浴びる準備をし始めた。
バスルームに歩き出す後ろ姿を追う朋子。
朋子も現実に帰れば、ただの不倫で終わってしまわぬ様、頭を仕事モードに切り替えてゆく。
バスルームまで追い掛けて、シャワーを捻る健の背中に抱きつく。
健の背中には、フワッと柔らかい感触が纏い、切ない女の哀愁までが伝わってくる。
「健さんの背中好きよ。
追い掛けたくなる。
この時間だけ、私はあなたごと愛せるの。
だから、一分一秒も無駄にしたくないわ」
「朋子…」
抱き寄せて唇を重ねる。
朋子自身も、時折自分が分からなくなっていた。
私は健さんを利用しているだけなのか?
それとも、本気になってる?
愛を語り、生涯の伴侶と決めたのは死んでしまった夫の佑樹(ゆうき)だけ。
でも、未来(みく 娘)と二人で生きていく人生を背負うのは、私には重かった。
世の中のシングルマザーはこんな事をしなくても、ちゃんとやってる人も沢山居る。
なのに、私は……
寂しさに負け、お金に人一倍執着を持ち、お金のない生活を怖れた。
佑樹が亡くなって、佑樹名義の預金口座は凍結され、お葬式をあげるにも苦労した。
相続がはっきりするまでは預金を下ろす事も出来ず、親に泣きつくしかなかった。
小さな未来を抱いて毎日泣いて過ごした。
僅かばかり掛けていた生命保険が下りて、少しだけ安心出来たのが救いだった。
仕事帰り、疲れて居眠り運転をし、電柱に激突して亡くなってしまった夫。
哀しみの中で、世の中の決まり事を恨んでいた。

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