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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第9章 小平太という男
 彼は一度も振り返ることなく出ていってしまった。
 一人取り残された薫子は部屋の片隅に身を寄せて泣いた。両膝を抱えて座り、顔を膝に伏せて声を殺して泣きじゃくった。
 何故、どうして、承平さんは小平太さんに私を逢わせようとしないの?
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