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愛しては、ならない
第25章 離したくない
二十九才の菊野だが、幼い顔立ちのせいか、年齢よりも大分若く見える。
彼女はそれを気にして、大人っぽく見られる事に憧れを抱いているらしい。
同い年の真歩の様に、妖艶な女性になりたかったーーと悟志にこぼしているのを見たことがある。
悟志は菊野の肩を包み込む様に抱いて、
「菊野は今のままで素敵だよ……
それ以上素敵になったら、僕はドキドキして困ってしまうよ……」
と、照れる風でもなくさらりと言っていた。
そのやり取りを見たのは、西本の家に来て間も無くの頃だった。
祐樹は両手で目を覆って呆れていたが、俺は何とも言えない苦さが口の中に込み上げたのを思い出す。
それが何なのか、あの時は分からなかった。
だが、今ならーー
俺は、あの頃既に悟志に嫉妬していたのだ……
彼女はそれを気にして、大人っぽく見られる事に憧れを抱いているらしい。
同い年の真歩の様に、妖艶な女性になりたかったーーと悟志にこぼしているのを見たことがある。
悟志は菊野の肩を包み込む様に抱いて、
「菊野は今のままで素敵だよ……
それ以上素敵になったら、僕はドキドキして困ってしまうよ……」
と、照れる風でもなくさらりと言っていた。
そのやり取りを見たのは、西本の家に来て間も無くの頃だった。
祐樹は両手で目を覆って呆れていたが、俺は何とも言えない苦さが口の中に込み上げたのを思い出す。
それが何なのか、あの時は分からなかった。
だが、今ならーー
俺は、あの頃既に悟志に嫉妬していたのだ……

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