この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君へ贈る愛の唄
第5章 熱
拓也side
バイトが終わって帰ってきたのは、午後9時すぎだった。
「ただいま〜」
シン…
玄関を開けると、なぜか中は真っ暗だった。
「母さん、もう寝てるの?」
ォレは不審に思い、母さんの部屋を覗いた。
しかし明りをつけると…
「はぁ…はぁ…」
「母さん、どうしたのっ!?」
母さんがベッドの中で苦しそうに息をしている。
おでこに手をあてると、ひどい熱だった。
「今病院に連れてってやるからな、しっかりしろよ」
「はぁ…はぁ…」
ーーーー
オレは母さんをおぶって、タクシーをひろう為に通りへ出た。
秋の夜風が冷たい。
行き交う車は多いのに、タクシーはなかなか通らなかった。
すると母さんがか細い声で言う。
「ごめんね、重いのに…」
「重くねえよ」
密着した母さんの熱が背中にジンジン伝わり、肩越しの息づかいがオレをせつなくした。
「なんで我慢してたんだよ。連絡くれたら、飛んで帰ってきたのに」
「…拓也…」
「ん?」
「お願い…どこへも、行かないで。母さんの傍にいて…」
「ああ、いるよ。だからもうしゃべるな…」
そのとき1台のタクシーが、2人の前にすべり込むように止まった。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


