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第10章 せッきン 【藍山栞２】

　シャワーを浴びる。何時もより少し、熱いシャワーを。

　そうして私の両手は、俄かに肌を滑ってゆく――。

「……」

　瞳を閉ざす。脳裏には、彼の書いた言葉が浮かぶ。


『ホントはしてるよ。キミのことを、想って……』


「ん……」

　口をつく吐息。だけど流れ込むように、また彼の言葉が続いた。


『彼女の眼差しは、何処か人とは違っていて、僕はそんな彼女に魅かれた』


　あっ……。


『今日、少しだけ彼女の想いを知った。僕は彼女の為に、何かをしたいと強く思った』


　んっ……ああ……。


『僕はキミが好きだから。キミのことが何よりも、とても大事だと思えたから』


　あ……ああっ！


　彼の拙い言葉と熱いシャワーが――私を、濡らしている。