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ガラスの靴がはけなくても
第5章 赤のしるし
私、何言ってるの?
あれじゃ、まるで…!
いつまでもこの状態を続けていく訳にはいかない。ううん。続けていい訳ない。
それは分かってる。
けれど、まだダメ。
こんな中途半端な私じゃ。
さっきの機敏な動きとはうって代わり重い足を引き摺って社員用通路を通り外に出る。
表に回ると、ビルの中でそこだけ明かりがついた五階のフロアを見上げた。
「さむ……っ」
冷たい風に思わず目を細めて、白い息を吐き出す。
火照った顔を冷やすにはちょうどいいかもしれない。
寒いはずだよね。
だって、まだあれからそんなに経ってないんだもん。
なんだかこの短期間に色々ありすぎて、もっと長い時間に感じるけど。
……やっぱり重いよ。三年の付き合いは。
それでも今はあの明かりの元にいる人のことだけ考えていたい。
「部長のバーカ」
私のバカ。
視線を下ろして、携帯を取り出す。
タクシーをここまで呼ぼうかと考えたけど、やっぱり止めた。
駅まで歩いてそこでタクシーを拾おう。
頭冷やさないと。
早く。
早く春が来ないかな。

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