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ただ一つの一対
第11章 オマケ 奇跡の少女

すっかり機嫌を直した蓮は、則宗に勧められフォークを握る。そして一口すくうと、則宗の口元へ差し出した。
「いっしょに食べるとおいしいよ。はい、あーん」
無邪気な少女の行動に、春政は堪えきれず笑い声を漏らし、菊は羨ましいのか妬みの目を向ける。甘いケーキは、特に甘い物が好きではない則宗の心に強烈な感情を生み出していた。
「……おい、菊」
「なんですか、自慢なら聞きませんよ」
「来週来る時、写真とかビデオとか、記録したもん複製して持って来い。どうせお前の事だ、生まれた時から今まで、細かく撮ってるだろ」
「なんで僕が……というかいつの間に、来週ここに来るのが決定事項になったんですか」
「蓮が見たいっつてんだから、来るのが義理だろうが! いいか、耳揃えて持って来なきゃ、破門だからな!」
心底面倒そうな顔を浮かべる菊の後ろで、春政は笑い続ける。だが、これは長い間冷戦を繰り広げてきた親子に訪れた、変化の一歩である。蓮の存在は、一文字家の未来を左右していた。
「まったく、何なんですかその態度の違いは。ああ、忘れていましたが、もう一つ報告があるんです」

