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ただ一つの一対
第11章 オマケ 奇跡の少女

庭にあった鉢植えを割ってしまった蓮だが、幸い怪我はない。則宗は恫喝し部下を動かすが、そう都合良く小さな女の子が喜ぶ物などあるはずがない。三人の大人がうろたえていると、着物の老人が静かに部屋へと現れた。
「随分と騒がしいな」
歩くだけで場を緊張させる強面の老人は、則宗の父であり、菊の祖父である元組長・春政。隠居し趣味の日本刀収集に勤しむ今も、現役の頃の威厳は失っていない。春政が頭を掴むと、蓮はびくりと震えて泣き止んだ。
「何で泣いてんだ、蓮」
見知らぬ子どもへ接する態度ではないと気付くと、則宗は眉をひそめる。
「親父、こいつが菊のガキだって知ってんのか?」
「そりゃ、お前と違って何度も顔を合わせてるからな。前に会ったのは、蓮の誕生会だったか」
「はあ? 俺を除け者にして、親父だけ会ってたってのか!?」
「じゃあ行ってくるって話したら、お前は付いてきたのか? どうせ面倒だとかなんとか言って、来なかっただろ」
正論を突かれて則宗が押し黙ると、春政は再び蓮に目を向けた。
「で、なんで泣いてたんだ?」

