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ただ一つの一対
第11章 オマケ 奇跡の少女

「お、おう。ちょっと待て、鋏持ったまんまじゃ危ないだろ」
則宗は道具を隅の方へ雑に寄せると、走り出す蓮を追い掛ける。菊はそれを眺めながら、ぽつりと呟いた。
「初めて菖蒲に会った時の頃を思い出しますね。あなたもあんな風に物怖じせず、僕の膝の上に乗ってきましたね」
「そうだったっけ? 蓮はすごいよ、パパならともかく、あの強面の組長さん相手でも、全然怖がらないもん」
「度量の深さは、一文字家に連なる者として相応しいという事ですね。さすがは僕の娘です」
駆け回る蓮を見つめながら頷く菊は、冷静を保っているようで端々が緩んでいる。則宗もまた、幼い孫にすっかり陥落されているようだった。
「あたしはちょっと心配だな。未来の蓮の旦那さんは、すごく苦労しそうで」
「その心配は無用です。先日蓮は『パパとけっこんする』と宣言していました。つまりそれは、一生手元に置いても許されるという事です。旦那などいらないですから、問題も起こりません」
冗談ではなく本気の調子で語る菊に、菖蒲は溜め息を漏らす。
「そんな事言ってるの今だけだよ。やっぱり心配だなぁ」

