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ただ一つの一対
第6章 夢の終わり
 
 今度は菊も腰を動かし美和子を追い詰める。激しいのが嫌いなどと言っていたが、それも方便だ。何度美和子が達しても、菊の勢いは衰えない。

「若っ、若……あああっ!! イク……ひぁ、ああーっ!!」

 もう何度目かも分からない絶頂に中が一段と締まったその時、菊自身にようやく変化がもたらされる。美和子の中でさらに膨らむと、痙攣し続ける美和子の最奥へ熱いものを放った。

 最後の一滴まで残らず出すと、菊は達した自身を引き抜く。そして息絶え絶えに震える美和子を抱き上げ、部屋から連れ出す。

「あ……若、私……」

「まさか今さら、あの無能の元へ戻るとは言わないでしょう?」

 部屋を出れば、それは則宗と決別する証である。しかし部屋を抜け廊下へ出ても、美和子に則宗を恐れる気持ちは全く沸いてこなかった。

「私……復讐、します。あなたも……いつか地獄へ叩き落とします」

 その言葉は、抱かれる前と同じもの。だがその端には、どこか甘みがある。

「そうでなくては面白くありません。足掻きなさい、その方が、僕も退屈せずに済む」

 菊が満足げに笑えば、美和子も笑みを浮かべる。絶望に暮れる夢は、もう終わる。そしてそれは、新たな夢の始まりでもあった。
 
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