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初音さんの二十日間
第3章 初音の心は母心
山辺がこの部屋に通うようになっても、私は手料理を披露したことなんてなかった。
残業という言い訳に、食事は必要ないのだろう。

こんなふうに向かい合って、湯気の立つ料理を食べるささやかな楽しさ、忘れてたなー。

「初音さん、ニヤニヤしてる」

「え?そお?」

「なんか思い出してるっぽい顔してる」

「キミはごはん粒が付いてるっぽい顔してる」

「あ!?」

慌てる柊二くんもなんとなく楽しそうに見えるから、ヘタクソでも作って良かったな。

「お母さんの手料理には敵わないけどさ、出来るだけ作るから覚悟して食べてね」

「覚悟なんて。俺すっげー嬉しいですよ。うちの母親、手料理とかあんましない人なんで」

「そうなの?」

遠い記憶を手繰り寄せる。

地味だけど綺麗な人だった。
「遊んでくれてありがとうね」と何度も言ってくれた。優しいお母さんの印象だ。




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