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わたしの肢体
第2章 秋芳 善(15)
ズボンも穿かず汚れたTシャツと下着姿のままリビングへ下りると、いつの間にか家族は食卓に勢ぞろいしていた。
いつの間に泣き止んだのか、さっき顔を母乳まみれにして大泣きしていた白も、帰宅した父親の腕の中で席につき、赤ん坊特有のきょとんとした顔で食卓に並んだ母親の料理を眺めていた。
「あ、善ちゃん。起きた?」
母親が大皿いっぱいのから揚げを食卓の真ん中に配膳しながら、優しい笑顔を善に向ける。
勢いよく母乳を迸らせていた豊満な乳房はきちんとカットソーの下に隠されていた。
「今日はねー、みんなの大好きなから揚げでーす!胸肉だけどね!えへへ」
少女のような純粋な笑みを浮かべた母親が、明るく述べる。
けれど男連中は空腹でそれどころではない。
善は瞼を擦りながら黙って自分の席についた。
母親の言うとおり、いつの間にか眠ってしまっていたのだ。
「さー、いただきまーすしよー」
母親は黒いウニッコ柄のエプロンを外しながら席につき、両手を合わせる。
それに合わせて、というかおのおの「いただきます」と呟いて夕飯が始まる。
お誕生日席に座る父親とは角を挟んで真横。
母親とは真向かいで、言とは隣。
百とは、斜め向かいだ。
「おれ、もも肉のほうが好きだなぁ」
ヘルシー志向という概念を持ち合わせていない百は頬杖をつき、マヨネーズ片手に恨めしそうに脂質抑え目のから揚げを口の中に放り込む。
そんな百を、善のすぐ下の弟であり、百のすぐ上の兄である言が物言わず見つめている。
言の腕の細さは母親とどっこいどっこいで、要するにガリガリ。
前髪は常に瞼を覆い隠す長さを保ち、家族間に於いても言がなにか発言することは極めて乏しい。
年子三兄弟プラス、長男の善とは15歳も年の離れた赤ん坊の白。
秋芳家の食卓はいつもこんな風に、どこか根本的にちぐはぐだ。
「ズボンくらい穿けよ」
夕飯はから揚げと、きゅうりとレタスのサラダと、あと、謎の赤いスープ。
献立を確認してから善が箸を握ると、唐突に父親が善に言った。
「だらしねぇなぁ」
善が父親のほうに顔を向けると、父親は怪訝な顔で善のいでたちを凝視していた。
いつの間に泣き止んだのか、さっき顔を母乳まみれにして大泣きしていた白も、帰宅した父親の腕の中で席につき、赤ん坊特有のきょとんとした顔で食卓に並んだ母親の料理を眺めていた。
「あ、善ちゃん。起きた?」
母親が大皿いっぱいのから揚げを食卓の真ん中に配膳しながら、優しい笑顔を善に向ける。
勢いよく母乳を迸らせていた豊満な乳房はきちんとカットソーの下に隠されていた。
「今日はねー、みんなの大好きなから揚げでーす!胸肉だけどね!えへへ」
少女のような純粋な笑みを浮かべた母親が、明るく述べる。
けれど男連中は空腹でそれどころではない。
善は瞼を擦りながら黙って自分の席についた。
母親の言うとおり、いつの間にか眠ってしまっていたのだ。
「さー、いただきまーすしよー」
母親は黒いウニッコ柄のエプロンを外しながら席につき、両手を合わせる。
それに合わせて、というかおのおの「いただきます」と呟いて夕飯が始まる。
お誕生日席に座る父親とは角を挟んで真横。
母親とは真向かいで、言とは隣。
百とは、斜め向かいだ。
「おれ、もも肉のほうが好きだなぁ」
ヘルシー志向という概念を持ち合わせていない百は頬杖をつき、マヨネーズ片手に恨めしそうに脂質抑え目のから揚げを口の中に放り込む。
そんな百を、善のすぐ下の弟であり、百のすぐ上の兄である言が物言わず見つめている。
言の腕の細さは母親とどっこいどっこいで、要するにガリガリ。
前髪は常に瞼を覆い隠す長さを保ち、家族間に於いても言がなにか発言することは極めて乏しい。
年子三兄弟プラス、長男の善とは15歳も年の離れた赤ん坊の白。
秋芳家の食卓はいつもこんな風に、どこか根本的にちぐはぐだ。
「ズボンくらい穿けよ」
夕飯はから揚げと、きゅうりとレタスのサラダと、あと、謎の赤いスープ。
献立を確認してから善が箸を握ると、唐突に父親が善に言った。
「だらしねぇなぁ」
善が父親のほうに顔を向けると、父親は怪訝な顔で善のいでたちを凝視していた。

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