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最後の一色
第19章 最後の一色を足す日
「至福の時って、こう言う事を言うのかしらね・・」
男のすべらせる手の温もりを髪に感じながら
美紗緒は女の喜びを味わった余韻に浸った。
康文しか男を知らない美紗緒にとって、愛し合い方にこれほど違いがあることに、
素直に言えば驚いた。
乳房をつつむその力、秘密の場所を執拗に攻め立てるその舌。
どれもが新鮮で斬新だった。
満足感に浸る美紗緒の体を包み込む涼輔もまた、けだるい幸福感に酔いしれた。
恋らしき小さな灯に気づいてから、男としてよりも画家としての信念を貫いて
今日まで必死に我慢してきた。
少しづつ彼女の体に触れはじめてから、気持ちは急激に膨らんだ。
自分のものにはならない、愛してはいけない人に心奪われ動揺もしたが、
人としての本能にまかせようと思ったのは、
彼女も僕の事を求めているとわかったからだ。
僕は彼女を愛している。
彼女も僕のことを想っている。
それだけだが、一番重要な事だ。
「僕も最後に想いを遂げられて幸せだよ」
体を起し、愛しい人の顔を眺めてから唇を重ねる。
「今のキミの顔・・その表情・・綺麗だ・・さぁ絵を仕上げよう。
その前にシャワーを浴びておいで」
腕を取り引き起こしてからもう一度キスをする。
とろけるように微笑んだ美紗緒は、裸のまま寝室の扉をあけた。

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