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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い
食事のあと、向かったのは俺の家。
この部屋に女の子を入れるのは初めてだった。
リビングで辺りを見渡している彼女を残し奥の寝室へと向かう。
呼べばすぐに入り口に姿を現したものの、そこで彼女の歩みは止まり、迷うような表情で俺を見てくる。
おいで、と声をかけるとゆっくりと近付いてきた。
間近で見れば、その目は落ち着きなく揺れている。
緊張しているかのようにどこか強張らせているかのような表情。
手を伸ばし、髪に触れた。
びく、とほんの少しだけ、彼女は反応を見せる。
視線が外れたのは一瞬だけ。
またすぐに戻してきたそのときに、本当に俺なんかでいいのかとあらためて聞いた。
髪を撫でていた手を、顔へと滑らせる。
なめらかな手触り。
ほんのりと赤く色づいた頬に、少し熱を感じた指先。
「先生がいい」
躊躇いのない言い切りは、さっきと変わらずだった。
俺じゃなきゃだめ、というその言葉の持つ、強さ。
「先生は?」
そして反対に聞き返してくる。
それは俺と同じ意味の問いに違いなかった。
「先生こそ私でいいの?」
当然だと口を開こうとしたとき
「……私を、彼女にしてくれるの?」
そう、続けられ。

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