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Dolls…
第9章 腕の中の宝物
だけど、この時の私はまだ気づいていなかった。
変化し続ける自分の体を恨むことで精一杯で
何も…
何も気づいていなかった。
ガチャ…
大きくて重いダイニングのドアを開くと、いつか見た広い部屋に長いテーブルが現れる。
そして、そのテーブルの上にはお洒落なキャンドルの灯り、1人分の食事が用意されていた。
恐る恐るダイニングへと足を進め室内を見渡したが椎葉さんはいないようだ。
……よかった。
今は椎葉さんと食事する気にはなれない。
しんっと静まり返ったダイニングでキャンドルの灯りだけがゆらゆらと室内を照らしている。
天井には大きなシャンデリアが飾られているのに、このシャンデリアは使ってないのだろうか。
この部屋はいつもキャンドルの灯りだけだ。
用意された食事の席につくと、そこにあったのは旬の魚介類を使ったシーフードパスタだ。
……そう言えば、いつか梓とパスタを食べに行く約束をしてたっけ。
その約束も結局守れずじまいになってしまった。
食欲をそそるようなシーフードの香りを嗅ぎながらも私の気持ちは何処か遠くにあるような気がした。
私は、いつまでここに閉じ込められてるのか…。
いつになったらここから出して貰えるのか…。
逃げようと思えばいつだって逃げ出せる。
今だって、ここに椎葉さんはいないのだからあの玄関ホールから逃げられる。
だけど、もし私が逃げたとわかれば椎葉さんに何をされるかわからない。
私を連れ戻す為に斧まで持ち出すような人なのだから。

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