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第64章 獣と獣の対決

｢何をしてるの？｣

「きゃっ」

　

　受付嬢は、声を掛けられて動揺したのか、トレーを足下に落とした。

　小さな破裂音と共に、硝子のポットが割れて散らばる。

｢大変！片付けます……｣

　西野は、眉をひそめて、応接室の方を見た。

｢誰か来ているの？｣

｢さ、さあ……｣

　受付嬢は、散らばった角砂糖や破片をおっかなびっくりな手付きで拾いながらオドオドしている。

｢中に誰がいるのか、と聞いてるのよ……｣

　西野がトレーをハイヒールで踏みつけ、ひと睨みした。受付嬢は真っ青になり唇を震わせる。

｢ひっ……ま……増本……さんが……｣

｢――増ちゃん？増ちゃんが、居るの？｣

　西野は目を輝かせドアノブを回した。