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eyes to me~ 私を見て
第55章 独りぼっちの歌姫

『ふふ……そう思うでしょ?
でも……剛さんはね、愛されて育った子供ではないのよ』
「――ど、どういう事ですか?」
『彼は……両親から虐待されていたの』
「!?」
思いもかけない事実に身体が強張る。
『彼の両親は事故で亡くなったの……それも、剛さんを置いて二人で出掛けて何日も放置して……そういう事になったの。
私は正直、それは剛さんにとって幸いだったと思うわ……
子供は、親を選べない……どんな親であっても……
ましてや幼い子供は自分でそこから逃れる術は無いんですもの』
「あ、あの……虐待って……どんなっ」
知らず知らずの内に声が震えていた。
そんな事があったとは欠片も出さなかった綾波。
心の傷を人に打ち明けられるならば、その傷は殆ど癒えていると言っても良い、と美名は考える。
だが、今でも深くその傷の痛みに苛まれているならば、その傷を色んな手を尽くして覆い隠すだろう。
強がって見せたり、明るい人間の振りをしてみたり……

