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第54章 擦れ違う恋人たち

　十一年前の誕生日に、訪ねて来た菊野を無理矢理に抱いた……
　菊野は泣いていたが、最後には綾波を受け入れた。
　あれから会うことはおろか連絡も取っていあなかったのだ。
　今回の怪我の入院があって久々に菊野に会ったが、一人の女性として親愛と憧れの情はあるが、もうそれは恋ではない、と実感した。
　十一年という歳月の間、綾波に色々な出来事があり出会いがあったように、菊野にも同じ様に様々な事があっただろう。
　菊野もあの夜の事は遠い遠い思い出として心の奥底に封印しているのかもしれない。
　再会した時、あの出来事をお互いに話す事は無かった。