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好きにさせて
第9章 理由


「やだ…ごめん…
私なんて
お母さんに比べたら
全然頑張ってないんだけど」


涙が流れると
茜はすぐに
謝りながら涙を拭って
俺に笑ってみせた


「頑張ったな、なんて
誰にも言われなかったから…」


たまらず茜を抱きしめて
俺は何度も何度も
茜の背中をさすった


茜のお母さんは
確かに頑張ってたかもしれへん

頑張ってたから
茜は弱音を吐かれへんかったんかも
しれんのに
病気にまでなってしもうて…


それに
5年も前から
旦那とうまいこと
いってなかったやなんてな

離婚するなんか言うたら
怒鳴られたかもしれへんし



「茜…」


「……」


「俺はなんも
驚いてないし
一ミリも嫌いになってないからな」


「…尚…」


心配すな

お前のこと
好きで好きで
仕方ないんやから

と、

言えたらええのに



「そろそろ出るか?
のぼせそうや(笑)」


「うん(笑)」


俺は
ゆっくりと
茜と一緒に立ち上がり
立ち上がると同時に
茜を抱き痩せた


「茜が辛かった分
俺が
楽しい思いさせたるからな」


茜は

ありがとう

と言う代わりに
俺の胸元に頰をすりよせ
そして
俺をぎゅーっと抱きしめた


甘えることの苦手な茜の
それができる限りの
甘えやと思った

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