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秘愛
第2章 動き出す・・
日が長いと今の時間は残業なのだ、という事を忘れさせてくれる。
7時少し前、一区切りつけたところで給湯室へ向かう。
コーヒーを片手に行き着く場所はもちろん喫煙室。
25階から見るオレンジに染まる空は、疲れた眼と頭を癒してくれる。
そこに遙香がいればもっと・・
あまりにも素直にそれを認めたので、一人ニヤッと口をゆがめてしまった。
だが今日は期待は少し外れた。
喫煙室に、遙香はいた。
でも一人じゃない。
他にも3人ほど先客がいた。
遙香を囲んで2人の男と1人の女が煙を立ちのぼらせている。
孝明は入らずに背を向け自分のデスクへ戻ることにした。
自分の目的はタバコを吸うことじゃない。
遙香と話をすることだ。
それも2人きりで・・
彼女の秘密を知ってから、そして自分の秘密を打ち明けてから、
2人にしかわからない心の内を共有する。
それが今の孝明には楽しみの一つのようになっているから。
今、あの輪の中に入らなくてもいい。
遙香が笑顔でいることを確認しただけでいい・・
先を歩く自分の影が廊下に長く伸びる。
白いシャツは夕日を浴びてオレンジ色に染まる。
その色づいた背中を、
遙香が見送っていることに孝明が気づくことはなかった。

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