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水蜜桃の刻
第16章 覚悟
「……だから俺にしとけばよかったんですよ」
そんな私に本郷くんは溜め息と共にそんな言葉をぽつりと落とす。
「相手、家庭教師でしたよね?
もしかしてずっと好きだったとか?」
そのまま、遠慮なく入り込んでこようとする彼に
「……悪い?」
思わず、反応してしまった。
だって心の中にずっと先生の存在があったことは事実だから。
けれど、は……と苦笑いをした彼はなおを続ける。
「そんなの、思いこみですよ。
久々に再会して何となく気持ちが盛り上がってそう思っただけなんじゃないんですか?
よくある、憧れを引きずってるってやつでしょ。
そこちゃんとわかってないと、適当に遊ばれて捨てられるパターンになりますよ?」
そんな、突き刺してくるような言葉をいくつも。
「……本郷くんって意外と言うんだ」
内容より、そのことに少し驚いてそう口にすれば、あれ? と呟いた彼は再び椅子に座り私を見た。
「そっち? 反論はなしですか?」
「……何それ。してほしかった?」
「うっわ。上から目線きたし」
ははっ、と笑った彼。
私もつられて思わず頬が緩んだ。
そんな私の顔を覗き込むようにしてくる真っ直ぐな目は、合わせれば逸らせなくなる。

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