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あの店に彼がいるそうです
第10章 最悪の褒め言葉です
 俺が車から降りたのはこの言葉があったから。
―岸本忍さんの病状をご存知ですか―
 いつだった。
 拓が言った言葉。
 禁酒禁煙どうこうの話をした時だ。
 そう。
 初めて類沢さんが二人に会ったあのアパートで。
 精密検査があるとか。
 けれどその結果は聞いていなかった。
 隠している風にも見えなかったけど、俺は俺自身に一杯一杯だったから気づいていなかっただけなのかもしれない。
 一旦そんな不安を感じると煙みたいに心の内を覆い尽くしてしまうもので、俺はドアを開けてしまった。
 頭の片隅にあったのは、最近の拓。
 もし、忍に何かあったなら。
 あんな平然としているものだろうか。
「鵜亥さんは忍とどういう関係なんですか」
 降りてすぐに問うた。
 本当はもっと早く尋ねるべき質問だったかもしれない。
 相手の素性も知らずに接触する怖さをいまだに俺は心得ていない。
 鵜亥はにこやかに答えた。
 そこでやっと聞いた肉声は、思っていたより鋭く無機質だった。
「そうですね。貴男が彼と親友であるのは伺っていますが、私のことはきっと知らないでしょうね。キャッスルも所謂闇医者というのを抱えていましてね、私はその一人なんですよ。勘違いしないでください。もちろん、忍さんが受診したのは大手の病院ですが、どこの闇医者もそこからカルテを流してもらってるんですよ」
 栗鷹診療所もそうだというのか。
 俺は頭の中に鏡子さんと悠さんを浮かべた。
「その結果って……なにかまずいんですか」
 相手の車まであと数メートルというところで俺は立ち止った。
 だって実感がない。
 冷静に考えたら何一つ現実味がない。
 忍が何か容体を悪くしたならすぐに拓から知らされるはずだ。
 ちょっとした病気とかなら。
 なら……
 目線が固まって動けなくなる。
 鵜亥の視線を感じる。
 いや、違う。
 そんなわけない。
 他人に言わないときの事情は二つだけ。
 自分で何とか出来る程度の些事かあるいは……

「言えないほどの重病……?」

 コンクリートに向かって落とした疑問に鵜亥が頷いた。
「だったら……俺、猶更忍と話さないと」
「なぜ私たちがわざわざ貴男に申告に来たのかわかりますか」
 混乱で頭が熱を帯びている。
 なんだ。
 この感覚。
 後頭部が鈍く痛む。
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