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唇に媚薬
第14章 涙の先に
その声でハッと我に返ると、佐伯が俺を真っ直ぐ見ていた。
「………!」
背筋を伸ばして、凛とした表情。
さっきまで溢れていた涙が、その瞳から消えている。
「……佐伯?」
「答えてくれてありがとうございます」
「あ、あぁ……」
「ごめんなさい、本題に戻しますね」
そう言いながらも、佐伯はイスから立ち上がって
蓮を見て微笑んでから、俺に向き直った。
「仕事に関係の無い相談だから、ずっと言えなかったんですが
……誰か、いい人を紹介してくれませんか?」
「………!」
……は?
紹介?
「仕事ばかりで出逢いが無い私に
素敵な男性を紹介してください」
「………」
「瀬名さん、ご友人が多いって鈴木さんから聞いてたから
こんな私でもいいって言ってくれる人を、探してほしいんです」
さっきまでとは打って変わって、明るい笑顔を浮かべる佐伯。
……だけど、反対に
横目に映る蓮の瞳が、切なく揺れている。

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