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唇に媚薬
第11章 純真なカノジョ
いやいや、ダメでしょ。
初対面の新人相手にキレてどうする。
だけど今
そんなことを考えてる余裕は無く、私は逃げるように店の外に出た。
5段ほどの小階段。
パンプスをカツカツ鳴らして駆け降りたけど……
「……うっ、あ、足が……!」
急なダッシュによってもつれた足が絡まって、その場でよろける。
こ、こんな短距離でハァハァ息切れって……
どんだけ運動不足なんだ私!
っていうか、むしろ体の衰えを感じる!
「…はぁ…っ」
膝に両手をついて、上がった息を整えようとした……
その時
「あ、あの……!」
お店の自動ドアが開く音と共に
後ろから高い声が聞こえてきた。
「ま、待ってくださ……っ」
「………!!」
抑えようとした心臓が、ドクンと強く跳ねる。
全身が沸騰したように熱くて、足がふらつく。
……だけど
呼ばれたからには、振り向かなければ……

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