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唇に媚薬
第9章 ヤキモチ王子
……さっきから
1人でなに言ってんだこの王子は。
失望に近い憐れみの目で、蓮にチラ見されたけど
俺に何らかの問題があるのは明らかで
言い返す言葉が見つからず、到着したエレベーターに乗り込む。
「……蓮」
「………」
「出張中、頼んだ」
お互い並んで前を向いたまま、そう告げると
蓮はふっと笑ってから頷いた。
「いいよ、気にするな。
国内のことはこっちで収めるから、自分に集中してくれ」
「……あぁ」
「そうじゃなくても、瀬名は普段から案件を抱え過ぎだ。
お前だから完璧に出来ちまうけど、それもある意味問題だな」
「………」
「2割減らして、その分睡眠にあてろよ。
彼女の為にも、体を大事にしてくれ」
……人のこと言えた立場かよ。
そっくりそのまま返したい台詞を腹ん中に収めて、溜息をついた。
佐伯のように素直に言えやしねぇけど
結局俺も
蓮に精神を救われてる1人っつーことだ。

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