この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
HOTEL・LOVE
第10章 震える目撃
後ろから背中をさすられた。
優しく滑るように、
その手が背中を往復する。
「この部屋、私一人でやるよ。
今隣りの部屋も出たみたいだから。
嫌でしょう?
知り合いの使ったとこ、掃除するの」
「・・すみません。
じゃあ隣りの部屋、やります・・
ホントにごめん・・」
顔をあげないまま
部屋を出ていく男の後姿が
こんなにも悲しげに見えるなんて・・
布団カバーから漂う香水の香りが、
なんだか憎らしく思えて仕方なかった。
仕事を終え、階段を降りながら
香澄は晴樹に
一緒に駅まで帰ろうと言った。
晴樹は黙って頷いた。
その後は一言も話さないまま
階段を下り続けた。
乾いた足音だけが、
うっすらと聞こえるだけだった。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


