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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第11章 見知らぬ花婿
若夫婦の寝所には整然と夜具がのべられている。豪奢な絹の夜具が幾重にも重ねてある。良人が来る前に、よもや妻が先に布団に入ることができるはずもなく、千種は朝までまんじりともせず、その傍に端座し続けた。
十二月の夜の冷えは尋常ではない。千種は薄い夜着一枚で寒さに震えながら、朝まで過ごすことになった。花嫁にとって、あまりにも長く過酷すぎる一夜がようよう明け初(そ)める頃、楓の白い頬をひとすじの涙がつたっていた。