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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第26章 悪しき夢(結実)
 頼経は今、その観音像を手のひらに乗せて眺めていた。愛しげなまなざしは、けして瑶子に向けられることはないものだ。やがて頼経の手がその仏像をそっと撫でた。その時、瑶子は確かに見たのだ。頼経の精悍な面にひとすじの涙がつたうのを。
「―」
 瑶子は洩れそうになった声を手で押さえた。あまりの動揺と衝撃に、手にした姫小百合が落ちたのにも気付かず、瑶子はその場から走り去った。
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