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一夜草~ひとよぐさ~【華鏡(はなかがみ)】
第4章 嵐の夜
時繁に手を引かれて連れてゆかれたのは、さほど遠くない場所にある小さな小屋だった。周囲に他には人家はなく、どうやらここにポツンと一軒だけ建っているようだ。
外見はどこにでもあるような漁師の住まう小屋で、小屋内も極めて質素な造りだ。少なくとも頼朝随一の側近といわれる河越恒正の屋敷に比べれば、御殿と厩舎ほどの違いがあった。
それでも時繁の几帳面な性格を物語るかのように、屋内はきちんと片付けられ、雑然とした印象はない。